小さい頃は世界も見識も狭く、金庫のある家がお金持ちのイメージでした。でも現実は、お金持ちじゃなくても、アパート住まいでも、金庫なんて別に特別な人が持つものではなかったのですよね。勝手にお金持ちのイメージを膨らませていたので、小学生の時に父の書斎のクローゼットに金庫があるのを見つけた時は、ちょっとショックを受けました。
金庫は鍵がありダイヤルもあり、それ自体が重くて気軽に持ち運べるものではありません。もし泥棒に入られた時も、鍵とダイヤルのまわし方を知らなければ開けられませんし、金庫ごと盗んで行こうと思ったら、袋に入るものでもないですし、世間の目もありますから現実的に無理でしょうね。金庫はそのためのものでもありますが、例えば阪神や東北で起こったような大地震の時、家が焼けたり倒壊した時でも、頑丈な金庫だけは焼け残り、瓦礫の下から見つかり、中の物は無傷ということになるのではないでしょうか。海水につかったら中身は濡れてしまうかもしれませんが、金庫の丈夫さは確かですよね。
だから私は結婚する際、夫と一緒に新しく、私たちの狭いアパートでも入るサイズの金庫を購入しました。中に入っているのは保険の証券と新婚旅行で行ったハワイで使い残した外貨数ドル分の現金だけですが。そして夫は金庫の両側に、引っ越しの時に使った極太マジックインクで、大きく名前と住所を書きました。住所まで極太マジックで書いたので書ききれず、金庫の裏側にまで回ってしまいましたが、こうすることでもし津波に流されても、後で見つかった時に自分が所有者だとわかるからですって。私たちが住んでいる地域は海からずっと遠いのですが。
引っ越ししても除光液で消し書き直すことができますから、住所を書くのも問題ないのですが、大きく名前や住所が書かれた金庫は、とてもじゃないけどお金持ちのイメージにはなりませんよね。